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  • 朝野裕一

身体が動く本質〜歩くということ:3

歩くということの本質の一つが、昨日お話しした物理的な側面です。

もう一つが、神経的な側面です。

今日はそのお話を少し。

腕と脚を降り出す時の筋肉の収縮。

これは大脳の運動野という部位からの神経の指令によって行われます。

しかし、

歩行は左右交互に動くリズミックな動きです。

そのリズムを司る部位は、実は大脳ではなくその下の脊髄のレベルで

発生されていると言われています。

正確にいうと、

脊髄の中枢パターン発生器と呼ばれるところで行われています。

これは猫などの実験で確認されているのですが、

除脳猫といって、大脳と脊髄を結ぶ部分が遮断された猫を、トレッド

ミルという、床が動く装置上に乗せると、勝手に四足が正常な歩きの

リズムで動いて歩き出すという実験です。

これによって、

歩行のリズム形成は大脳で作り出されているわけではなく、脊髄の

レベルで行われていることがわかりました。

それだけ、半ば自動的に動くようにできているんですね。

どうしてかというと、

いちいち、まず右脚を出してその時は反対側の腕を振り、その次に左脚

を振り出し、同時に反対の腕を振る、などと大脳レベルで考えていては

スムーズな歩きができないからです(ぎこちなくなってしまいます)。

自動的にリズムを形成する機構があれば、もっと効率が良くなるという

ことです。

昨日書いたような、歩くための物理的なエネルギーを発生させる仕組み

も、実は神経のこのようなほぼ自動的な指令によって行われています。

歩こうと思えば、自然と身体がうまく動くようにできているわけです。

もちろん、

そこに色々な情報をかぶせて意識的に異なった歩き方をすることも

できます。

でも、

ベースとなる歩き方は、ほぼ(車でいえば)自動運転です。

ただし、

身体の姿勢が変化(円背など)したり、関節の可動域が制限されたり、

極端に下肢や体幹などの筋力が低下したりすると、歩き方が変わって

しまうことも事実です。

あくまでリズム発生としては自動運転というだけで、車に例えれば、

いくら自動運転できても、タイヤがパンクしてしまったり、ハンドルの

動きが制限されたりすればきちんと走れない、というのと同じです。

ですから、

私たちとしては、日頃の身体のメインテナンス=コンディショニングを

怠らないようにしなければなりません。

もう一つ、

自動制御的な歩行のリズム発生のメリットとして挙げられるのが、

歩きながら他の作業を色々できる、ということがあります。

自動運転車ならば、乗車した者が運転手として運転動作をしなくても

いいので、車の中で仕事やその他の作業をすることができます。

それと同じ感覚です。

歩きスマホは危ないこともあるので注意しなければなりませんが、

歩きながら他の人と会話するとか、周りの景色を眺めるとか、考え事を

するなど、歩くことに意識を奪われずに、他のことができます。

本当にうまくできているなぁ、と感じますね。

歩くという行為・行動の本質の、もう一つの要素が神経によるリズムの

制御ということでした。

今日も読んでいただき、ありがとうございました。また明日。

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